同じ傘と同じ空と同じ日
「おかしいな。あの傘どこかで見たんだけどな。」
さとるは、独り言をつぶやいた。大きな交差点の赤信号で待っている向こう側の男の青い星の入った傘を見て思った。
灰色の空にどう見ても厚い雲雲が浮かぶ。
「すっかり忘れていた、今日はおれの誕生日だ。」
青信号になった。
一斉に交差点を挟んで、こちらからも向こうからも通行人の波が動き出す。
人の群れの中にいる向こうの男が、だんだんと近づいてくる。
自分と背丈と体型が似ている。
今すれ違う。
「あ、おれの持っている傘と同じ傘持っている。」
通り際に、向かい側の男がつぶやいた。
あまりにそっくりで、不思議なことがあるものだ。
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